外郎は元来、頭痛を取り口中を爽やかにする薬としての名前でした。中国の元の国が滅亡したとき、元の大医院礼部員外郎職にあった陳宗敬が博多に亡命し、外郎延祐と名乗ってこの薬を創製した、と伝えられています。歌舞伎十八番で知られる「外郎売り」も、この薬売りのことです。これが大層苦いので、禁裏へ献上の際、口直しとして添えたのが、黒砂糖と米粉で作った菓子"ういろう"です。その後外郎氏は小田原に移り、薬と菓子双方を商って発展します。外郎菓子の製法は諸国に伝えられ、今ではお菓子の名前のみが知られることとなりました。薯蕷粉、糯粉に砂糖を加えて蒸した外郎は、あっさりと滑らかな持ち味で、春から夏の上菓子に多く使われるものです。